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2009年1月 3日 (土)

夕凪の街 桜の国

新聞か何かで見たときに、タイトルがとても綺麗で印象に残っていたこの映画、DVDレンタルで借りて見てみました。

この映画は「夕凪の街」と「桜の国」の二部構成になっています。

「夕凪の街」は、そのタイトル通り、広島の原爆で被爆した女性、皆実を主人公に夏の夕凪の、何となくじわっと湿った暑い空気感の下で繰り広げられる美しくも悲しい物語です。また、「桜の国」は、皆実の弟の娘、七波を主人公に、ちょっとからっとした雰囲気の中で、少し軽いタッチで進められますが、ほんの少し寂しさが漂う話になっています。そして、全部見終わったあとに、ちょっとしたもの悲しさと、ほんのりした温かさが残る作品です。

「夕凪の街」では皆実を演じる麻生久美子の、明るいけど少し儚さが漂う演技が、「桜の国」では七波を演じる田中麗奈の、からっとした切れのいい演技が、それぞれのストーリーの時代と雰囲気の違いをよく表現していたと思います。

なお、「桜の国」については、七波の友人、東子役の中越典子を配することで、現代に残る原爆の影響について被爆者の子孫と、一般の人それぞれの観点から描写できるように工夫しているところがよく考えられていると思います。この2人の掛け合いもなかなか見ていて楽しかったです。また、七波の父(皆実の弟ですね)、旭役の堺正章の飄々とした雰囲気も、重苦しくなりすぎないムードづくりに貢献していたと思います。

また、双方のストーリーに唯一出演するのが、皆実と旭の母、フジミを演じる藤村志保ですが、凛としていながら優しく、思いやりのある母親ぶりは流石だなと思います。

全般に、原爆の直接的な描写は抑えめにしていますが、それぞれの時代で原爆が人々に与える影響についてさりげなく、しっかりと描写しているので、原爆の悲惨さと、それが今でも人々に苦しみを与えていることについては、十分に伝わってくるあたり、よく工夫されていると思います。

この平成の世の中で、これまでの原爆を取り扱った様々な秀作と異なったアプローチで、原爆の悲惨さと現代に残る影響をよく表現した、素晴らしい作品だと思います。「夕凪の街」では、健気に生きる皆実が原爆症に冒されていく姿に涙が止まりませんでした。「桜の国」では、七波と東子の珍道中にちょっと笑みがこぼれたりしましたが、結局じんわりと涙が出てくる、そんな映画でした。多くの人に見てほしい映画です。

テレビ局も、番組改編期にしょうもないバラエティーを流すだけでなく、たまにはこういう良質な映画を放送してほしいと思います。

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