任侠ヘルパー 最終回
前回までは、予想以上に上手にストーリーを転換してきましたが、やはり、介護と任侠という無茶苦茶な(笑)組み合わせは無理があったようで、最終回は、かなり疑問点の多いものになってしまったという印象です。
「タイヨウ」が結局閉鎖されることになり、残された老人達の引き渡しを求めて、厚生労働省から藤堂(陣内孝則)が乗り込んできますが、六車が「高齢者優良賃貸住宅」にすれば、国土交通省の管轄で藤堂には手が出ないはず、と言います。まあ、名案のような気もしますが、そんな簡単に許可が出るわけもないし、老人達をすぐに引き取るのは不可能です。藤堂があっさり引き下がったのにも、「そんなに上手く行くわけないだろう。」という読みがあったような気がして、なんとなく、藤堂の方にシンパシーを覚えてしまいました。
その後も、結局、閉鎖されてしまったタイヨウに老人達が戻ってきて、その面倒を最後まで見ようとする彦一(草薙剛)たちは、結局警官隊に制圧されてしまいます。ここも、「まあ当然だよな」としか思えないのは間違っているのでしょうか?
このドラマの問題点として、やはり暴力組織をある種正しいもののように描いているところがあります。実際はこういう組織で実は「いい人達」というのも多分あり得ないわけなのに、誤解を招くような表現は暴力団追放にある種悪影響を与えかねないような気もします。高齢者を食いものにしようとする組織はあるわけで、そういう組織が自分たちの所行を正当化するきっかけにつながるような描写は出来れば避けた方がいいと思いました。
それはそれとして、相変わらず介護現場の問題についてはしっかり描いているのが、このドラマの評価に困るところです。冒頭で「タイヨウ」に有料老人ホーム?の入居者が置き去りにされますが、この高齢者達は大広間に雑魚寝のような、不潔な環境に押し込まれていたわけです。こういう施設も実際あるわけなので、現状の課題をまさにしっかり指摘していると思いました。
また、彦一と藤堂が対峙する場面で、彦一に「介護って何だよ」と問われた藤堂が「それは俺にもわからない、多分答えはないだろう。」といい、さらに、「わからないのに制度を作っているのかよ」と問いつめる彦一に、藤堂は「それが俺たちの仕事なんだよ」と堂々と(!)返します。なんとなく、現在の介護行政の難しさと、その中でとにかく仕事をする人たちを象徴した場面のような気がしました。お役人を単なる悪人にしないスタンスは、中々のものだと思います。
ラスト近くで、結局、幹部に選ばれたりこ(黒木メイサ)は強引に彦一にキスをしました。先週も書きましたが、この要素はいらなかったかなあ。ぶっきらぼうでありながら仕事はしっかり頑張るりこ、凶暴な外見だけど情に厚い彦一、あと晶(夏川結衣)と涼太(加藤清史郎)の親子、さらに、終盤近くに登場して、結構存在感があった藤堂など、とにかくキャラクターの立ち方が素晴らしかったので、恋愛要素は余計だったかもしれません。
全般的感想ですが、ドラマにおける暴力組織の扱いとして問題はあると思いますが、介護を巡る諸問題はよく調べられていて、ドラマに上手に取り入れていたのは素晴らしかったと思います。また、草薙、黒木、あるいは仲里依紗といったキャストがとても頑張って、キャラクターに真実味を出していたのも良かったです。まあ、評価に困るドラマではありますね。
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