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2010年8月16日 (月)

終戦特集ドラマ「15歳の志願兵」

終戦記念日前後は太平洋戦争を扱ったドラマが多いです。このドラマもその一つですが脚本が大森寿美男なので、見ることにしました。

前にもちょっと書いたような気がしますが、私が最も好きな脚本家は大森寿美男です。結論から言うと、流石大森脚本という感じで、見て良かったです。この時期に良くある、主人公が亡くなってしまう悲劇のドラマではありませんでした。

基本的に、こういうドラマにありがちな、熱血なだけのステレオタイプの人物は出しません。陸軍将校の「アメリカの学生も出征しているのに、日本だけ出征しないという余裕はない」とか、体育教師の「増援を前線で求めているのに、それに応えないのは間違っている」とか、それぞれに一理があると思います。なにしろ、実際に負けてきているわけで、少しでも戦力になるようであれば活用したい。これはもっともですし、それぞれの実戦体験に基づいているので、十分な説得力があります。

一方、中学生たちもただ純真で、大人たちに騙されているわけではありません。正美(池松壮亮)や文学が好きな光男(太賀)は、最初は、名門校の生徒らしく、自分たちが国に貢献する道は出征することではなく、他の道があると考えていて、藁人形に銃剣を突き刺す訓練には懐疑的で、光男など、長篠の合戦を例に挙げて、その無意味さを指摘しています。このあたり流石「風林火山」の脚本家だと思います。確かに、この時期の戦争は頭数だけでなく、兵器の開発とか、兵士の数だけではどうにもならない部分があって、そういう部分がおろそかになると勝てない面があるのは当然で、そこをしっかり書いているのも素晴らしいと思います。これに対し、主人公の正美の両親が戦争に子どもを出したくないという気持ち、これも肉親の情から当然だと思います。

このあたりの双方に理がある同士のぶつかり合いが大森脚本の魅力だと改めて思いました。一方で、正美の父、順一(高橋克典)や歴史教師(近藤芳正)の正論が通らないあたり、「空気」が世の中を決めてしまう怖さもちゃんと表現されています。

それが、総決起集会を経て、甲飛に志願する段階になると、もの凄い形相で訓練をするように変わっていきます。このあたりの変化とか、とても上手でした。俳優陣は全般に抑えるところと、感情をあらわにするところのメリハリが効いていて、上手だったと思うが、特にこの2人が光っていて、ドラマが引き立ったと思います。

そんな中で、結局、全員が志願したわけでなく、散々煽っていた5年生の出征者がいないというのが、ちょっと意外です。このあたりは想像なのですが、5年生は流石に上級生で、実は、正美や光男と同じように考えていたのだけど、一種のマッチポンプとして、甲飛への志願についての学校全体の高まりを上手く利用して、志願を回避したのかもしれません。そう考えると、なかなか意味深な感じもします。

また、正美も結局出征しないというのも、こういうドラマでは珍しいです。このあたり、なかなか上手な構成だと思います。ラストで正美と光男の母(夏川結衣)が会って、光男の日記を正美が読み、涙する場面は少し狙いすぎだと思いましたが、構成としては良くまとまっていたと思うし、光男の日記の中にあった、「考えることをやめるべきではなかった」とか、ラストの2人の会話とか、いかにも大森寿美男らしい力のある台詞だと思いました。

というわけで、1時間少しの短いドラマではありましたが、よく練られた脚本と、役者の上手な演技、それを引き出す演出、いずれもなかなかのハイレベルだったと思います。やっぱり、大森寿美男が「龍馬伝」の脚本を担当していれば、ここ最近の停滞したストーリーにはならなかったのではないかと残念でなりません。制作統括の磯氏は2012年の大河「平清盛」を担当するそうだが、大いに期待できそうです。

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