「ハナミズキ」を見ました。
昨日、映画「ハナミズキ」を見てきました。メジャーな映画なので近所のMOVIXでも上映されていて、ありがたい限りです。
(ネタバレ注意)内容ですが、最近特に多い、不良美化の映画(これはこれで面白い映画もありますけど)とは一線を画していて、昔の青春映画のようでした。いい意味で。そのころなら主役であったであろう薬師丸ひろ子が、いまや主役のお母さん役というのも時代を感じます(笑)。
この映画ですが、紗枝(新垣結衣)は看護師の母(これが薬師丸ひろ子の役ですが、実に好演してます。)と暮らす大学受験を目指す進学校の高校生、康平(生田斗真)は漁師を志す水産高校の高校生という初期設定と友人関係、家族関係等の初期設定が完璧です。紗枝は大学に合格し、東京での生活を送り、康平との関係にも変化が・・・、というストーリーもベタだけど実に自然です。
紗枝の父は、若くして病死したプロのカメラマンで、彼女の心の中に父の思い出が残っているという描写があったので、東京で知り合ったカメラマン志望の純一(向井理)と親しくなっていくのも非常に自然に受け入れられるものがあります。
ただの甘い恋愛ものというのではなく、二人の生きる時代、1996年からの10年間ほどという時代の厳しさもしっかりストーリーに入っているのもいいです。紗枝が就職で苦労するところとか、就職氷河期の厳しさが思い出されます。もっとも、今も厳しいですが。
2人ともとても真面目に目標を持って生きているだけに、生きていくことの大変さが伝わってくると思いました。特に、康平役の生田君は漁師ということで、船に乗っての漁業の場面がかなり多かったのですが、とても頑張っていて、本当の漁師に見えるほどでした。体質にもよると思いますが、酔ったりして、船に乗っていると思ったよりも体力を消耗するんですよね。彼の努力が「康平」の真面目さに真実味を加えたと思います。感心しました。
でも、紗枝は東京で苦労し、康平は事業拡大が上手くいかず借金を抱えた父の死などもあり、二人は結局離れていきます。康平のお父さんも、康平たち家族に苦労をかけた理由が、よくある自堕落な男とかでは全くなく、仕事に打ち込んだ結果、借金をし、亡くなってしまうというのが切ないです。こういう部分もいかにも現実にありそうな描写です。
そういうわけで、康平は漁協の職員のリツ子と親しくなり、結婚します。一方で、康平の結婚を知った紗枝は純一との結婚を決意するわけです。こう書くと、いかにもどろどろしていそうですが、意外にそうでもありません(笑)。まあ、見方は分かれるかもしれませんが、個人的には康平の行動は理解できます。現実的に考えれば、この段階では紗枝とは生活の基盤が全く違うので、近くの女の子との方が人生を共有するには適当なのではないかと思います(苦笑)。余談ですが、リツ子役が蓮佛美沙子とか、紗枝の友人役が徳永えりとか、若手女優陣がなかなか渋くて好きです(笑)。
ただ、ここで終わってしまっては、純愛ストーリーは完結しません。というわけで、康平は借金で家族が離散し、リツ子と別れます。紗枝はイラクで命を落とした純一と死別します。純一のくだりとか、ちょっと都合がいいような気がしますが、個人的には、出会いのときからの純一の考え方、行動から見て特に不自然には感じませんし、この別れるエピソードも、時代を反映していて無理はないと思います。
純一を失った紗枝は、カナダにある父との思い出の岬を訪ねます。そこで、康平の思いやりの深さに改めて恋心を抱くわけです。ここは感動の場面なはずですし、実際、いい場面ではあると思うのですが、康平が「マグロ漁船」に乗って訪れていたというのは、個人的には受けました。北海道出身でマグロ漁船に乗るというのもあまり考えられないような気もするのですが、そういう設定でないと康平をカナダに出現させられないよなあ、と脚本の苦心を感じます。(余談ですが、うちの本家の当主は気仙沼のマグロ漁船の船長ですが、南アフリカで操業していて、ほとんど家には帰ってきません。本当に大変な仕事だと思います。)
というわけで、ちょっとラストで破綻しかけますが、最後は二人が結ばれて良かったと素直に思いました。なんだかんだいっても一生懸命生きてきた紗枝と康平が結ばれるのは嬉しかったです。
全体的な感想ですが、見る前は「恋空」みたいな映画だったらいやだな、とちょっとふあんでしたが、特に脚本と俳優の頑張りが伝わってくる、とても真面目な映画でした。こういう時代でも目標を持って前向きに生きている人は多いはずだし、そういう人なら、いろいろな意味で共感できるのではないかと思います。スイーツ映画という先入観を持たずにいろいろな人に見てもらいたいです。
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 「実写版 ヤマト」を見ようか迷っている人に(2010.12.06)
- 「実写版 ヤマト」は面白かった。(2010.12.05)
- 「十三人の刺客」を見ました。(2010.10.10)
- 「ハナミズキ」を見ました。(2010.09.05)
- 「ちょんまげぷりん」を見ました。(2010.08.21)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント