「十三人の刺客」を見ました。
連休初日のMOVIXでレイトショーでの鑑賞でしたが、相変わらず「海猿」の人気が高いようです。でも、「十三人の刺客」も結構お客さんが入っていました。
で、見ていたんですが、チャンバラとかとは別の、結構残酷な場面が多いので、そういうのが嫌いな人は気をつけたほうがいいです。ただ、映画の設定上必要な部分なので仕方ない部分もあります。
まず印象に残ったのは、チャンバラが売りということで、俳優さんの殺陣がとても格好いいです。特に松方弘樹!彼が出てきたときには、なんとなく胡散臭い感じで「うわー安っぽそう」とか思ったのですが、とんでもない間違いでした(笑)。立ち回りがとても決まっています。重厚で豪快、しかも緻密といった感じです。一方、伊原剛志は華麗で切れ味鋭い感じで、松方と好対照な感じがしました。大河「新選組!」の佐々木さんを思い出して、懐かしかったです。
若手の役者さんもがんばっているんですが、こうなると殺陣の迫力では見劣りしてしまいます。でも、この映画はそれを上手にカバーしているのが良い点です。伊原演じる平山の門弟の役で窪田正孝が出ているんですが、未熟さを若者の一生懸命感に上手く結び付けているあたり、なかなか考えられています。
あとは、山田孝之と伊勢谷友介について少し書きます。
山田ですけど、多分、クローズZEROあたりで監督さんに気に入られたんでしょうねえ。昔のナイーブな少年の面影はどこに言ってしまったのでしょうか(笑)。それはともかく、今回は主演の役所広司演じる島田新左衛門の甥、新六郎という役ですが、眼光鋭く、精悍なたたずまいはまさに若武者そのものです。見ていて思ったのですが、山田孝之は最近の若手俳優さんには珍しいがっしりとした日本人体系(ジャニーズの若手とは明らかに違う)なので、時代劇には合っているかもしれません。
伊勢谷は一番おいしい役かも。黒いメイクで目をらんらんと光らせた「山の民」をワイルドに演じています。正直、「白洲次郎」とか「龍馬伝」の高杉なんかよりよっぽど格好いいと思いました。クライマックスでも彼だけ刀を使わずに石とか棒でどんどん敵を叩きのめしていくのがなかなか痛快です。この映画は基本的に侍の宿命とか、結構重いテーマを扱っているので、こういう、ちょっと変化球の役柄を入れるのは娯楽映画としてはありだよな、と思います。
役者についていっぱい書いてしまいましたが、新左衛門と、かつて共に修行した鬼頭半兵衛(市村正親)との知恵比べもなかなか良いです。この半兵衛、主君が暴君と知りながら、忠義という侍の本分のためにベストを尽くす、これも武士の鑑のような人物で、組織人のはしくれとしては大いに共感するところもありました。敵方を全てただの悪者に描いていないというところで、映画の深みも出たように思います。
そうそう、新左衛門について書いていなかったですね。演じる役所広司の殺陣も立派でしたが、一見のんびりしているようで、頭も切れ、包容力もあるとても格好いいリーダーでした。敵方に半兵衛のような優秀な人物を配したことで、より彼の立派さも引き立ったように思います。でも、「天下のため」と「主君のため」どちらを侍として選ぶか、これはなかなか難しい問題のように思いました。
最後に、暴君松平を演じた稲垣吾郎に触れないわけにいきません。いやー、本当に嫌な悪役でした(笑)。やっていることも暴君そのもの。ジャニーズタレントでここまで悪逆な敵役を演じる人は見たことがありません。本当に偉いと思いました。
全体的な感想ですが、200人以上に13人で挑むというのはさすがに無理があるわけで、刺客側もどんどん壮絶な最後を遂げるし、正直、爽快感を味わうにはちょっと重いかな、という感じです。でも、力と力の、知恵と知恵が真正面からぶつかり合うオーソドックスな時代劇で、個人的には好みです。でも、今は「大奥」みたいなちょっと倒錯した設定の映画のほうが受けるのかなあ?男性としてはああいう設定には違和感があるけど。
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コメント
はじめまして。
龍馬伝で検索してこちらにおじゃましました。
「十三人の刺客」、同じような感想を持っている方がいて、嬉しくなりました。
役者さんたちの演技が素晴らしいと思う映画、近頃では珍しいような気がします。
投稿: 牛くんの母 | 2010年10月30日 (土) 23時08分
コメントありがとうございます。
役者さんをより生かすのも、やはり脚本と演出なんですよね。「十三人の刺客」の役者さんたちは幸せだったのではないでしょうか?「龍馬伝」と比べると特にそう思います。
投稿: かのーぷす | 2010年11月 1日 (月) 20時42分