龍馬伝 最終回
この大河は、いいと思える点と、「うーん」な点が見ていてずっと混在していましたが、最終回もそんな感じです。
決定的に違和感を感じる点から先に書きます。
この龍馬は、人間に上下をなくして、みんなでこの国のことを決めていく、と言っていますが、やはりどうしても理解できません。この言葉に共感する人は、実際の世の中に目を背けているんじゃないかと思うくらい。
実際のところ、現在でもそんなことは実現していませんし、幕末の段階であれば夢物語だと思います。
だから、「坂本は自分たちの企てをつぶした」と怒る大久保利通(及川光博)には妙な話、共感してしまいます。彼らにしてみれば、現実問題、徳川家は最大の大名なわけで、徳川慶喜を中途半端に新政府に入れてしまうと、薩長がつぶされてしまうという危機感があるわけです。この認識は木戸(谷原章介)も共有しているんだと思います。
このドラマ上は、龍馬暗殺の黒幕候補として彼らの描写を入れたのかもしれませんが、彼らの発想のほうが理にかなっていると思うんですけど。暗殺直前で、中岡(上川隆也)が龍馬が熱く語るのを聞いて涙していましたが、なんか、龍馬の空想を憐れんでの涙にも見えてしまいました。
あとは、新選組は最後まで謎でした。あんなに芸のない集団なら、京の町の治安は守れそうもありません。
それから、やはりちょっと今回はテンポが悪かったような気もします。龍馬の長台詞も妙に多かったし、「風林」のラストの「なかなか死なない勘助」とちょっと似たものを感じました(苦笑)。
次は、良かった点です。
オープニングで、武市さんや以蔵が海で稽古している場面を出したのはとても良い場面でした。龍馬も含め、みんな未来を信じることができた時期だよなあ、とちょっと懐かしくなりました。ベタですが、上手な構成だと思います。
ベタといえば、龍馬が死んだ後のお龍(真木よう子)との場面も、明るい海を背景に、長すぎず短すぎず、ありがちとは思いますが、なかなか良い入れ方でした。最後までやや地味な印象でしたが、なんといっても、お龍は龍馬の妻なんだし、ラストを締めくくる資格はあると思います。
そして、今週のみ登場の今井をはじめとした見廻組ですが、このドラマの新選組よりは、よほど実力派の剣客集団として描かれていましたねえ。今井にしてみれば、徳川に仕える誇りの全てを奪った龍馬は許しがたい存在でしょう。ここの部分、亀治郎さん、なかなかの存在感でした。まあ、顔芸も結構ありましたが。
そして、暗殺の場面です。福山さん、上川さん、亀治郎さん、そして「龍馬伝」スタッフの努力の集大成とも言える迫力の場面だったのに、「愛媛県知事選挙」のテロップでぶち壊しです!はっきり言って宮城県には関係ないんですけど。こういうテロップは該当県だけで流して欲しいものです。
といいうわけで、大河では「風林火山」以来、久々の完走になりました(全てが終わって、亀治郎さんが引き上げていくときに、「風林」のテーマが脳内に鳴り響いたのは、我ながら不謹慎かも)。
全般的には、新しい龍馬像、これまでとは違った大河を作ろうという主演の福山さんや、メイン演出の大友さんをはじめとするNHKの演出、美術陣の意気込み、がんばりは十分に伝わってきました。こういうことはしっかりと評価しなくっちゃ。とにかく画面が重厚なドラマでした。
一方で、リアルさを追求した画面作りのために、全般に画面が暗かったり、ヒロインたちが地味に見えた(剣道着姿の佐那を除く。白というのは暗い画面でもお姫様の派手な色彩に負けない存在感を発揮すると思いました。)り、ちょっと華がない印象がありましたし、あと、やっぱり龍馬を、リアルさと理想を兼ねそろえた存在としてしっかり描いてほしかったです。そういう意味で、特に脚本は残念でした。
というわけで、残念な部分も多かったですが、一年間、楽しませてもらいました。
来年は「江」ですね。予告では、なんか、「功名が辻」を思い出しました。綺麗な気の強いお姫様が、歴史を動かしていくという、最近主流の路線(「功名が辻」は、実はそういう路線とはちょっと違うと思ってます。)に戻るわけです。まあ、4月~6月は「JIN」のアシストまで期待できるし、視聴率は良さそうですな(苦笑)。予告編にまるで新鮮さを感じないし、どうしようかな。
「江」の予告をこんな風にちょっと皮肉に見ていたのですが、その後の「坂の上の雲」の予告は引き込まれました。モックンと阿部ちゃん、菅野美穂の表情が素晴らしいし、戦艦三笠の雄姿にも惹かれるものがあります。なんか、ドラマ全体の張り詰めた雰囲気が「江」と違いすぎるんですけど(苦笑)。
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